トップオブザワールド

「ご近所付き合い」


これはプラトンの時代から続く永遠のテーマである。多分。





以前ブログにも書いたが、私の上のフロアには「絶対に挨拶をしない人間」が生息している。

狭いエレベーター内で「おはようございます!!!」と絶叫しても返事がないのが恒例の流れだ。

ところがだ。

先日、エレベーターで鉢合った時に、なんとむこうから挨拶をしてきたのである。

「おはようございます。」

と。

面食らった私は、小さな声で「おはっす。」としか言えなかった。
しかしまあ、ついに奴も人と人の世をまともに渡り歩けるようになったのだなと、少し良い気分で仕事に向かったのを覚えている。








ある日のこと。
奴の部屋番号のポストにガムテープが貼られていることに気づいた。なんと、引っ越してもぬけの殻になっていたのである。




つまりだ、彼の挨拶は最初で最後となってしまったのだ。
2年近くに渡るマッチアップ。その試合数、恐らく数十にものぼっていたのに。





きっと奴は自分の当マンションにおける寿命が近いと悟り、辞世の句として声をかけてきたのに違いない。





私は思う。






あの男は、武士だったのだ。






この時代に、武士と巡り会えた奇跡。



神に感謝。